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愛猫との別れが私を猫嫌いにさせた

初めて家族になった猫・ハルが、難病を患いわずか生後6カ月で亡くなってからというもの、猫を見ることがイヤになった。



ハルが生きていた頃は、他の猫を見ると「わー、可愛い。…まぁうちのハルが一番だけどね」といった気持ちになっていた。しかしハルが亡くなった今、他の猫を見ると「もうハルはいないんだなぁ」とつい心が落ち込んでしまうのだった。猫を見たくない一心で、ものすごい猫嫌いになった。本物の猫を見るのはもちろん、写真や動画などで見ることも避け続けた。

ハルが亡くなってからというもの、何か食べてももどしてしまい、ほとんど眠らず、ほとんど水だけで過ごしていた。ハルが亡くなって10日後、随分前にネットで注文したハルのための猫用毛布が自宅に届いた。ハルがいなくなったという事実をつきつけられたようで、本当に辛かった。

「猫、見たい」

「猫、見つかったよー」。友人の第一声がそれだった。ハルが亡くなってからしばらく経ったある日の朝、電話がかかってきた。ハルを可愛がってくれた友人からで、私があまりにふせぎこんでいるので、猫を見つけてきれてくれたのだった。

30秒ほど逡巡して、私の口から出てきたのは「猫、見たい」という言葉だった。




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「この子、貰い手いるのか?」というレベルのブサ猫発見

里親を募集している保護猫から、ブリーダーさんのところにいる猫まで、実に様々な猫の写真を見せてもらった。どの子も目がぱっちりと可愛らしく、「うちのハルもこんな感じだったなぁ」と少し懐かしくなった。

様々な猫の写真がある中で、一枚だけものすごい衝撃的な写真があった。…その写真の子猫が…正直言いにくいことではあるが…何というかこう…個性的なお顔というか…ハッキリいうと…まぁ少々ぶちゃいくなのだった。

「この子、貰い手いるのかな…」と、猫からしてみれば余計なお世話な感想を抱いたわけだが、何を隠そうその子猫が今一緒に暮らしているリクという猫との出会いなのだった。

まだその写真を見ている時点では、その子がまさか愛する家族になるだなんて思っていなかった。それよりも、「もう一度猫と暮らす」ということを決めかねていたのだった。

「やっぱり私、猫飼うのやめます」

ハルが亡くなったときの文章を読んだ読者から、いろんなメッセージをもらった。ブログのコメント欄や、ツイッター、私個人のメールアドレス宛に、ハルを想って書いてくれた温かいメッセージをたくさんもらった。その中で印象的だったのが、「やっぱり私、猫飼うのやめます」というものだった。

ハルが最期まで生きようと頑張っていたことを文章で書こうと思ったのは、ハルを誇りに思っていたからだった。読んでくれる人たちに対して伝えたかったのは、「ハルがいなくなって死ぬほどつらかったけど、ハルと過ごした日は大切な宝物だ」ということ。「ハルなんか最初から家に来なければよかった」なんてことは一度たりとも思ったことがない。

でも、ハルが亡くなるまでの日々の様子を見て、「猫飼うのやめる」と思ったのであれば、もちろんそれはその人の自由だし、仕方が無いことだと思った。その人の気持ちは痛いほどわかったし、実際猫の写真を見ている時、「次の子がまたすぐに亡くなったらもう耐えられないかもしれない」と私も思ったからだった。

やっぱり、猫が大好き

何度も何度も考えて、結局「猫ともう一度暮らす」という結論を出した。どうしても、猫と一緒に暮らしたかった。

お仕えしたい猫様は、あの時妙に気になったぶちゃ猫だった。サバトラ白の猫で、お鼻はピンク。そこまでは先代猫のハルにそっくりだったが、ただひとつ違うのが、あまりに悪い目つきだった。ジト目というのだろうか…。あの目つきを一瞬で好きになってしまい、この子に全身全霊をかけてお仕えしたいと決意したのだった。今度こそ、一生をかけて幸せにしたいと思った。

子猫がやってきた

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ぶちゃ猫が家にやってきた(実は何日に家族になったのか、覚えていない)。春の暖かな陽気の日だった。部屋の隅にキャリーケースを置き、そっと開ける。小さい子猫がぴゅーんと外に出てきた。一通り部屋を探検した子猫は、「ミュー」と小さく鳴いた。

少々怖がっている様子を見せたので、無理に触ったりすることはしないよう細心の注意をはらった。ご飯をあげる時などは、子猫の目線に合わせることができるよう、私も床にはいつくばって、小さい声で話しかけるようにした。

名前は、「リク」


新しくやってきた小さな家族。名前をずっと考えていた。先代の亡くなった猫の名前は、「ハル」。実は漢字もあって、「杳」と書く(実際にその読み方もある)。

「杳」という漢字は、見ての通り「木の下に太陽がある」という意味で、「薄暗い」様子を表す。ハルは、おでこの部分が日が暮れた直後の空の色に似ていた。そのため、この漢字にぴったりだと思い、つけたのだった。

新しく来る予定の子猫の名前は、この「杳」という漢字に関係するものがいいなと思った。日没の際は、地平線や水平線の下に太陽が沈む。だから、太陽が沈む「海」とか「陸」とか、あるいは日中太陽のある場所である「空」とか、そういう名前がいいと考えていた。二文字で呼びやすいし、猫本人も覚えやすい名前。

せっかくなので、そうした候補の名前を手当たり次第に読んでみた。最初、全く反応を見せなかった子猫。何度も読んでいるうちに、どうやら自分が呼ばれていることに気がついたようだ。「空ちゃんー」「海ちゃんー」と呼び続ける私。「陸ちゃんー」と読んだ瞬間、子猫は「にょん」と小さく鳴いたのだった。

お世話をするたびに癒やされた

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こうしてリクと名付けられた子猫との暮らしが始まった。少しずつ私に慣れてくれたリクは、本当に可愛かった。ご飯をカリカリ食べる感動的な姿に「ちゃんとご飯を食べて偉いねぇ」と話しかけ、いいうんちが出たら「リクのうんちの香りはまるでシャネルの5番ですね」と話しかけ、買ってもらったイチゴ柄の毛布をヨチヨチ歩きで運ぶ様を見た時なんかは「マーベラス」と叫んだのだった。

ご飯を食べたり、うんちをしたり、猫じゃらしで遊んだり。そうした当たり前のことをこなすリクの姿を見るのが本当にうれしかった。先代の亡くなった猫・ハルは、亡くなる直前はそうした当たり前のことが一切できなくなっていた。だから余計にうれしく思ったんだと思う。

リクはもうすぐ3歳になる

リクは、今度の2月6日で3歳の誕生日を迎える。初めて1歳の誕生日を迎えた時、「ちゃんと1歳になって偉いねぇ」とリクに伝えた。もちろんそれは、1歳の誕生日を迎えることなく亡くなってしまったハルが偉くない、という意味なんかではない。無事に1歳になれない猫もいるんだということを知っているからこそ、リクが誕生日を迎えることをうれしく思うのだ。

3歳の誕生日、何をしようか今からすごくワクワクしている。猫用のケーキを買ったり、ちょっと奮発して高いおもちゃを買ったり…。この子の喜ぶ顔が早く見たくてソワソワする。誕生日には、リクに「生まれてきてくれてありがとう」と心から伝えたい。この先ずっと、一緒にいられますようにとの願いを込めて。

このあと、まさか更に2人の猫と出会うとは思わなかった

先代の猫との別れにより、大の猫嫌いとなった私。そんな私が、新しく猫を家族として迎えただけでも驚きだったのに…。私はこの後、更に2人の猫と出会うことになるのだった。(続く)

おまけ漫画「リクがやってきた」



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猫なんか、二度と飼うもんか -3- fin

【その4へ続く】