この連載のタイトルは「結婚の条件は、愛猫を捨てることだった」である。しかし、「結婚の条件として愛猫を捨てることを提示する人」ではなく、「結婚に至る際に愛猫と仲良くなろうと全身全霊を込めて努力をする人」と一緒になる場合、どういう状況に至るのか。


 

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見知らぬ男性には中々警戒を解かない

先月から彼氏(小学校の同級生)と同棲をしている訳だが、彼はとにもかくにも猫と仲良くなろうと全力で努力をしている。もちろん彼は結婚の条件に「愛猫を捨てること」なんて提示したりはしない。毎日毎日猫達にご飯をあげたり、トイレをキレイにしたり、一生懸命遊んだりしてくれている。しかし、まだまだうちの猫達は慣れてはいない状態だ。

彼との付き合いはとても長く、うちの猫も彼が家にいるというだけで物陰に隠れたり、彼を威嚇したりといったことは一切しない。ただ、自分から積極的にはコミュニケーションをとろうとはしていないのだ。

いつもお世話になっている獣医さんも言っていたが、やはり一般的に、猫は男性が苦手な生き物だ。「うちの猫が怖がるから……」という理由で、女性の獣医さんがいる病院に移る飼い主さんもちらほらいるという。私の愛猫も例外ではなく、男性の大きな体を怖がるし、低い声もあまり好まない。

もちろん、最初から飼い主が男性であるのなら、猫もすんなりと慣れてくれるし、とても深い愛情を飼い主に対して示してくれることだろう。しかし、「見知らぬ女性」ならまだしも、やはり「見知らぬ男性」に対しては、そんなにすぐには警戒を解かないのだ。





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「子持ちのバツイチ女性と結婚した男性の気持がすごくよくわかる」

同棲してからは、彼が猫にご飯をあげる係となった。少しでも猫が彼になつくようにと、私がその大役を譲ったのだった。そのおかげで、彼と猫との距離は少し縮まったようだった。彼が近くを通っても猫は爆睡したままだし、時々彼の太もものにおいを近くまで嗅ぎにきたりする。

しかし、彼本人からみると、目標からは程遠いらしい。私が家の中で洗濯したり床掃除をしたりと家事をやっていると、その間猫は後ろからずっとついてくるのだ。二階に行ってもついてくるし、お風呂場に行ってもついてくるし、リビングや寝室にいってもずっと後ろからついてくる。その様子を見て、彼は「本当に猫に愛されてるんだね……」と少ししょんぼりしていた。

私が二階から猫の名前を呼ぶと、うちの子たちは二人ともちゃんと二階まで来てくれるし、私が手を差し出すとうちの猫は傍までやってきて手に対してスリスリし始めるし、私が帰ってくると玄関まで出迎えてくれて、床でクネクネダンスをしてくれるのだ。それを見た彼は、「二人とも俺にはそんなこと絶対してくれないのに……」と毎回しょんぼりしている。「リクちゃんとハルちゃん(うちの猫達)は本当に俺のこと大嫌いなんだな……」と悲しそうにしていたのだった。

「子持ちのバツイチ女性と結婚した男性の気持がすごくよくわかる」とまで言っていた。バツイチ女性の子供と、あまり仲良くなれない夫の気持ちが、なんとなくわかるそうだ。仲良くなろうと必死なのに、期待するほど受け入れてもらえないのはやっぱり少しガッカリはするのだろう。

猫もちゃんと愛情を返してくれる

それでも、彼の猫に対する愛情表現はとても素晴らしいものだと思う。姿勢を低くして、うちの猫に対して「もー!かわいいねぇかわいいねぇ」と話しかけ、なにかいいことをしたら本気で褒めるし、猫の誕生日には猫にプレゼントまで買ってきてくれる。猫の写真も自分のスマホやデジカメで毎日パシャパシャと撮影しているし、撮った写真はプリンターで印刷してアルバムとしてまとめている。休日の午後には廊下で日向ぼっこをしながら幸せそうに眠っている猫の寝顔をニヤニヤしながら長時間眺めて過ごしている。

一昨日は、とうとう猫が夜に一緒に寝てくれたらしい。場所は足元だったらしいが、朝起きて開口一番に「昨日ね!ハルちゃん(下の子)がね!一緒に寝てくれたの!!」と嬉々として報告してきた。「もうね!ちょっと邪魔だったけどね!嬉しい!」と言っていた。確かに猫が一緒に寝てくれると嬉しいが、あまりに激しい喜びようだった。

少しずつではあるが、猫も彼のことが好きになりつつあるようだ。彼がおもちゃを持ち出して猫を遊びに誘うと、必ず猫は付き合ってくれるようになった。彼と猫のコミュニケーションにもなるし、猫の運動量も増えるし、大助かりだ。正直、彼が猫と遊んでいる姿を見ていると、遊ばせ方が非常にウマイので、「なんかばかデカイ巨大な猫じゃらし(=彼)が家にあるみたいだな……」と大変失礼なことを思ったりしてしまうのだが、仲良くしている彼と猫を見るとほほえましい気持ちになる。

次の目標は

次なる目標は、猫がむける表情を、私に対する場合と同じものにすることだそうだ。私が撮影した猫の写真と、彼が撮影した猫の写真を見るとその違いがよくわかる。


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~私が撮影した猫の写真~





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~彼が撮影した猫の写真~


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表情が全く違うのがお分かりいただけただろうか……。よく言われることだが、プロのカメラマンが撮った写真ですら、猫の可愛さを最大限引き出すという意味では、やはり飼い主さんが撮ったものには負けてしまうらしい。確かに、見知らぬ人に向ける表情と、飼い主に向ける表情では当然差が出てきてしまうだろう。そうしたことが、この写真にも見て取れる。

このまま順調に愛情を注ぎ続ければ、いつの日か彼が撮った猫の写真も、私が撮影したものと同じような感じに……なるかもしれない。

まだずっと先のことかもしれないが、今からその日を待ち遠しく思う。